痴漢の罪名!迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪は大違い
「ここにチカンがいます!」突然電車内で叫ばれ、駅員室に無理やり連れて行かれ、その場で現行犯逮捕されてしまいました。万…[続きを読む]
痴漢は、懲役刑ではなく「罰金刑」で処罰されることの多い犯罪です。
実際のところ、痴漢で逮捕されても、その後元通り仕事も生活もできる場合も多いです。
そのため、処罰される事をたいした問題だと考えないことがありますが「前科がつく」ことは大きなデメリットと言えるでしょう。
ここでは、痴漢容疑で夫や家族が警察に逮捕・留置場に勾留されたときに起訴を回避し、不起訴になって前科をつけない方法について、解説します。
普段真面目に生活していても、つい魔が差して痴漢をしてしまうことがあります。痴漢がクセになっていて、繰り返してしまうということもあるでしょう。
痴漢で捕まったら、どんな罪に問われるのでしょうか?
まず問題になるのは、各自治体で定めている迷惑防止条例違反です。それぞれの自治体によって刑罰の内容が異なりますが、だいたいの相場は同じです。
たとえば東京都、埼玉県、千葉県の場合、下記のようになります。
他方、暴行や脅迫の手段によって悪質なわいせつな行為をした場合には「強制わいせつ罪」が成立します(刑法176条)。
この場合には下記のようになるため、罪がかなり重くなります。
なお、痴漢の相手が13歳未満の児童であった場合には、暴行または脅迫の手段を使っていなくても、迷惑防止条例違反ではなく強制わいせつ事件となります。
痴漢で逮捕されたらどうなるかは、下記のページをご参照ください。
痴漢で捕まって「有罪判決」が出されると、前科がついてしまいます。
前科は今後の人生に大きな悪影響を与えるので、何としても前科がつくのを避けなければなりません。
それでは、前科をつけないためには、どのすれば良いのでしょうか。
前科をつけないためには「無罪」になったら良いのではないか?と考える人が多いかもしれません。
確かに、裁判になっても懲役ではなく無罪になれば、前科がつくことはありません。
しかし、日本の刑事裁判では、無罪になる可能性が非常に低いです。検察官が起訴する事件を慎重に選んでいることや捜査能力が高いことなどから、日本の刑事裁判の有罪率は「99.9%以上」です。
そこで、いったん起訴されてしまったら、ほとんど100%の確率で有罪になってしまうのです。
このように、日本では刑事裁判の有罪率が非常に高いため、裁判になった後で無罪を勝ち取ることに大きな期待を寄せるべきではありません。
もちろん、本当にえん罪で、起訴されてしまった場合には否認・無罪主張すべきですが、実際に痴漢をしていて前科をつけたくないのなら、別の方法を考える必要があります。
それでは、前科をつけないためにはどのような方法が有効なのでしょうか?
この場合、不起訴処分を勝ち取ることが最も効果的で確実です。
不起訴処分とは、検察官に不起訴の決定をしてもらうことです。不起訴とは、刑事裁判をしないということであり、裁判にならないため、刑罰を受けることも前科がつくこともありません。
痴漢の場合、身柄事件と在宅事件がありますが、このどちらのケースでも不起訴にしてもらうことは可能です。
身柄事件で不起訴にしてもらえたら、その時点で即時に身柄を解放してもらえるので、大きなメリットがあります。
在宅事件でも、略式起訴後、不起訴になったら裁判所に呼び出されることもなく前科もつかないことが決定するので、安心です。
起訴されなければ前科はつきません。
それでは、検察官は被疑者を起訴するかしないかをどのような基準で決めているのでしょうか?
これについては、下記のようなさまざまな要素が考慮されます。
もちろん事案の内容が重大な場合には、被疑者がいくら強く反省していても起訴される可能性が高いです。
痴漢事件で不起訴処分を獲得する際に重要なのは「被害者との示談」です。
被害者と示談ができていたら、不起訴にしてもらえる可能性が格段に上がります。
示談交渉は、不起訴処分を勝ち取るために非常に重要なポイントです。
示談交渉では、痴漢による慰謝料の支払について被害者と話し合い、もし和解が可能な場合は示談書を作成します。
示談ができたときには、被疑者は示談金を支払いますが、被害者からは刑事告訴を取り下げてもらったり、嘆願書(加害者に対する処分を望まない旨を希望する書面)を書いてもらったりすることができます。
嘆願書については、被害者が拒絶したら無理に書いてもらうことはできませんが、少なくとも示談するときには刑事告訴を取り下げてもらうことは必然となります。
それでは、被害者と示談をすすめるときには、どのようにすればよいのでしょうか?
この場合、一般的には弁護士に刑事弁護活動を依頼する事が多いです。
なぜなら痴漢の場合、通常被疑者は被害者の連絡先を知らないという致命的な事情があるからです。
被害者の連絡先がわからないと、示談交渉を進めることはできません。また検察官に被害者の連絡先を聞いても、検察官は教えてくれません。
そこで、被疑者やその家族が示談交渉をしようとしても、当初の段階で躓いてしまいます。
弁護士に刑事事件の弁護を依頼したら、被害者の連絡先を弁護士が検察官に聞いてくれます。
被害者が「弁護士になら連絡先を教えてもいい」と言ってくれたら、被害者の情報の開示を受けられるので、弁護士が被害者に連絡を入れて示談交渉を進めてくれます。
このとき、被疑者が被害者宛に謝罪文を書き、弁護士に渡してもらうことなども多いです。
そして、弁護士が相手の感情を害しないように慎重に話を進めて、相手との間で折り合いがついたら示談が成立します。被疑者としては、できるだけ相手に嘆願書まで書いて欲しいところですが、相手がそれに応じない場合には、示談をするだけで終わることもあります。
示談書や嘆願書ができたら、弁護士から検察官にそれらの書類を提出してもらいます。
その後、検察官は、被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断します。
不起訴処分を勝ち取るために示談をするとき、いつまでに示談を成立させないといけないかも重要です。
示談は、検察官が起訴か不起訴かを決めるまでの間に成立させる必要があります。いったん起訴されてしまったら、その後示談が成立しても、起訴を取り下げてもらうことはできません。
検察官がいつ起訴・不起訴を決めるかは、身柄事件と在宅事件の場合で大きく異なります。身柄事件の場合には、逮捕後10日~23日後までの間に、早期に処分が決定されます。これは、起訴前に身柄拘束できる期間が限られているからです。
これに対し、在宅事件の場合には、いつ処分が決定されるのか、被疑者側にはわかりません。痴漢後3ヶ月くらいしてから検察官に呼出を受けて調書を取られ、起訴されることなどもあります。
つまり、在宅事件の場合でも、油断していると示談が間に合わなくなってしまう場合もあります。
電車内で痴漢行為で逮捕されたら、たとえ身柄が釈放されて普段通りの日常生活ができるようになったとしても、実刑・執行猶予になる前にすぐに被害者との示談交渉を開始すべきです。